「ローン特約条項による契約解除」マンションの一室の売買契約におけるローン特約条項による契約の解除について、買主の請求が認容された事例(東京地判平28・11・22)
携帯電話の割賦代金が原因?ローン特約による解除
この事案では、4780万円の物件を諸費用込のフルローンで借入しようとしています。これくらいの価格帯の物件を諸費用込のフルローンで組もうとする買主の資金計画には無理が方が多いです。
4780万円の物件に対して手付金は100万円だけ、携帯電話も分割で買っているくらいです。おそらく売主である不動産業者もローンの本申込みで承認をもらえない可能性がある事くらいは考えていたでしょう。
条件の良い物件は、すぐに売れてしまう可能性がある為、買主も短い期間で資金計画をシュミレーションする必要があり、冷静な判断ができなくなっている状態もあります。
このような状況を分かった上で、宅建業者である売主が手付金を返さないという判断をすることは、私はこの売主には誠実さが欠けているように思います。
事案の概要
原告夫妻は、平成27年9月、宅建業者である売主との間で、売主所有のマンション一室を代金4780万円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、手付金100万円を支払った。残代金4680万円と諸費用は銀行から借り入れ、平成27年10月末日までに支払う予定だった。
夫妻は、売買契約に先立ち、銀行に住宅ローンの事前相談を行い、A行からは総額5040万円、B行からは総額5030万円で正式申込を受け付ける旨の回答を得ていた。
本件売買契約書では、融資金額は都市銀行より総額5020万円、融資未承認の場合の解除期限は平成27年10月23日とし、下記のローン特約条項が記載されている。
<ローン特約条項>
1.買主は、この契約後すみやかに、表記の融資のために必要な書類を揃え、その申込手続きをしなければならない。
2.前項の融資の全部または一部について承認を得られないとき、買主は標記の融資未承認の場合の契約解除期限10月23日までであれば本契約を解除することができる。
3.前項によってこの契約が解除された場合、買主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。
4.買主自主ローンの場合、買主は、融資利用に必要な書類を9月30日までに金融機関に提出し、その提出書類の写しを売主に提出しなければならない。
買主が必要な手続きをせず提出期間が経過し、売主が必要な催告をしたのち標記の融資未承認の場合の契約解除期限10月23日が過ぎた場合、或いは故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部又は一部について承認が得られなかった場合には、第2項の規定は適用されないものとする。
本件売買契約の際に、夫妻は売主から、本件マンションの東側に8階建てのマンションが建築される予定であるとの説明を受けた。
その後、夫妻は、ローン事前相談を行ったA・B行に加えて、C行にも住宅ローンの正式申し込みを行った。
その金額は、A行5140万円、B行5120万円、C行5080万円と、いずれもローン事前相談時の金額及び売買契約書記載の融資金額を上回る金額だった。
審査の結果、A・C行は、夫妻に対して融資を承認しない旨を通知し、B行は審査結果を解除期限である同月23日までに回答しなかったため、同日、夫妻は売主に対して、ローン特約条項に基づき本件売買契約を解除する旨通知すると共に、手付金100万円を返金するように求めたが、売主が手付金返還を拒否したため夫妻が提訴した。
判決と内容のあらまし
裁判所は、次の通り判示し、夫妻の請求を認容した。
⑴ローン特約条項該当性
売主は、夫妻が故意に既存の借入れを銀行に申告せず、虚偽の証明書等を提出したことにあたる旨主張するが、その債務の内容は13万円弱の携帯電話の割賦代金であり、これを申告しなかったことを理由に融資の全部の承認が得られなかったとは認め難い。
⑵ローン特約条項の不適用
売主は、夫妻が事前相談を前提として本件売買契約を締結し、その契約書に融資金額を5020万円と明示したにも拘らず、事前相談の金額を超えて融資を申し込んでいるのであるから、信義則上、ローン特約条項を適用する前提を欠くと主張するが、5020万円を本申込みの上限とする記述は存在せず、保証料等の諸費用部分を合理的な理由により増額して申し込むことには相当性があり、その増額幅も小さく、本件売買契約の合意として許容されているというべきある。
⑶ローン特約条項の濫用
売主は、夫妻が本件マンションの東側に8階建てのマンションが建築されることを了解して売買契約を締結したのに、後になって眺望が気になり白紙解除したいと申し出たところ、売主から手付金を没収すると言われ、銀行からの融資の承認を得られなければローン特約条項により契約を解除して手付金の返還を受けられることに着目し、敢えて事前相談で承認されていた額を超えて融資申込みをしたのであるから、権利の濫用であると主張するが、上記の通り夫妻の本申込みには合理性、相当性があるから売主の主張は認められない。
また、売主は、銀行が事前相談で承認したのに本申込みで否認することは考え難く、夫妻側に問題があったと主張するが、銀行側の正式審査により融資が得られないことは起こり得ることであり、本事案で夫妻の帰責性がある事情により本申込みを承認しない旨決定されたことを認めるに足る証拠はない。
まとめ
契約後、融資金額を増額する場合でも金額幅が小さければ容認される事があることが分かりました。
また、この事案では携帯電話の割賦代金が承認を得られなかった理由ではないとされていますが、知らないうちに携帯代金の支払いを滞納してしまっている方もいます。
例えば、引越しが多い方は注意しておいた方は督促の通知等が前の住所に届いてしまう事もあり、滞納してしまっている事に気づかない事があります。
どんなに年収の良い方でも、上場企業に長年務めている方でも、滞納が一定期間続くとローンの審査に落ちてしまいます。一度の履歴が残ると、約5~10年はローンが組めなくなってしまいます。
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