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スナック店からのカラオケによる騒音、上階住民からのクレーム

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スナック店からのカラオケによる騒音、上階住民からのクレーム

 スナックのカラオケ騒音に対する度重なる苦情申入れが営業妨害行為には当たらないとされた事例(東京地判平29・5・31)

スナック店からのカラオケによる騒音、上階住民からのクレーム

 騒音による被害を受けた住人の慰謝料請求が認められた事例です。

住民は、約8ヶ月間もの間、深夜2時まで営業するスナック店の騒音に悩まされていたようです。

それに対して認められた賠償金は、治療費6950円、弁護士費用3万円、慰謝料30万円。

判決後の詳細は分かりませんが、長期間健康被害を受けたこの期間と、賠償金の額を考えれば、引越し費用等に問題がなければ引越したほうが良いかもしれません。

事案の概要

 借主であるスナック店経営者はスナックを営む目的で、貸主が所有する4階建て建物(軽量鉄骨造)の1階部分を媒介業者の媒介により借り受け、平成27年3月より営業を開始した。

 本件スナックは、午後8時から翌日午前2時まで営業し、無料でカラオケを利用できるサービスを提供するものであったため、音、臭気及び煙などで近隣に迷惑が掛からないようにすることを条件に貸主がその申込みを承諾したものであった。

 その為、スナック店経営者は、営業開始に先立ち、床及び天井に防音ボード、防音シートなどを設置する防音対策工事を行った。

 開店日に、従前から本件建物の2階住人からカラオケや営業の騒音について苦情があり、スナック店経営者は追加の防音工事を施したり、スピーカーの位置を変更するなどの対策を講じて営業を続けたが、その後も2階住人は数十度に渡り、警察、区役所、貸主に対して通報したり、苦情を申し立てたため、違法な営業妨害行為であるとして、営業損害、慰謝料等343万円余を求めてスナック店経営者が2階住人を訴えた。

 これに対して2階住人は、平穏な生活が妨害されて睡眠障害等を患ったとして治療費や慰謝料等200万円の損害賠償を求めて反訴した。

判決と内容のあらまし

 裁判所は、次のように判示して、スナック店経営者の請求を棄却し、2階住人の請求を一部認容した。

⑴本件カラオケの使用の違法性

 事業活動に伴って発生する騒音による侵害行為が違法な権利侵害に当たるかどうかは、侵害行為の態様、侵害の程度、被侵害利益の性質及び内容のほか、当該地域の地域環境、行為者の側の事情などの諸般の事情を総合考慮して、その被害が社会生活上受忍すべきと認められる限度を超えるものかどうかによって判断するのが相当である。

 そして、当該事業活動に伴う騒音について行政取締法規の規定が存在する場合、そうした規定による基準が、受忍限度を超えるか否かを判断する上で重要な指標になる。

 本件では、東京都環境確保条例により、飲食店営業を行う者は、午後11時から翌朝6時までの間、原則としてカラオケ装置を使用してはならず、その例外を、

 ①音響機器等から発する音が防音対策を講ずることにより当該営業を営む場所の外部に漏れない場合のほか、

 ②地下街や人の居住の用に供されている建物等の境界線から50メートル以上離れた場所において営業する場合で、

かつ、区域の区分ごとに定められた音量を超えない程度(本件店舗のある近隣商業地域においては、午後11時から午前6時までの間は、音源の存する敷地と隣地との境界線における音量が50d媒介業者を超えない程度)で音響機器等を使用する場合に限っている。

 本件では、居住用建物の階上、階下の関係において、これに匹敵する最大44.6d媒介業者ないし49d媒介業者の音量の騒音が生じており、しかもこのような音漏れが深夜2時の営業時間終了時まで断続的に続いていたもので、スナック店経営者による侵害行為の態様や程度は軽視できない。

本件店舗におけるカラオケ装置の使用は、何ら周辺住民に受忍を強いるような公益性を有するものではないこと、スナック店経営者も、音や臭気などで迷惑をかけないことを条件に、階上に2階住人が居住する居室を賃借し、飲食店を営業しているのであるから、午後11時以降午前2時までのカラオケ装置の使用は、被告に対する関係で、受忍限度を超える違法な権利侵害行為と評価すべきである。

⑵2階住人の苦情申入れ等の違法性

 2階住人は、午後11時以降に音漏れがある場合や、特に気になる程度の音量が生じていた場合に限って報告をしたり警察に通報しており、これらの2階住人の被害申告の状況からしても、音漏れの有無や程度について、2階住人が誇大な申告をしているものとは認めがたく、こうした被害を受けている2階住人が、貸主や仲介業者に対して善処を求めたり、行政に相談に赴いたり、警察に通報したりといった対応をしたからといってスナック店経営者の正当な営業活動を違法に妨害したとまでいうことはできない。

⑶スナック店経営者の不法行為による損害額

 2階住人の不眠による受診分については、本件騒音被害によるものと認め、その治療費6950を相当因果関係のある損害と認める。

 慰謝料については、認定した騒音の程度(午後11時からの時間帯に最大で49d媒介業者、平成27年4月13日以前はそれ以上の騒音を生じさせる程度の音漏れ)、受忍限度を超える騒音の発生期間(平成27年3月7日から同年11月2日まで)などに照らせば、30万円が相当である。

 弁護士費用については、本件事案の内容に鑑み、3万円が相当である。

まとめ

 東京都環境確保条例があるのであれば、役所に相談した時点で、役所の方がもう少し説明をしてあげれば、スナック店経営者が営業妨害を主張するまでの大きな問題にはならなかったのではないでしょうか?

 とはいえ、この判例以外でもマンションにお住まいの方からの、騒音に関する相談は増えてきています。

 特にコロナで学校が休校になり「子供の走り回る足音がうるさい」という相談が多いです。

 自宅を売却する際、近隣トラブルがあった場合、購入希望者に伝えておかなければいけません。騒音に対する苦情を直接本人に話すと近隣トラブルに発展する可能性が高いです。

 近隣トラブルになると、物件価格を相当安く設定しないと売れなくなってしまう事があります。

 騒音トラブル、近隣トラブルを回避するためにも最初の引越しの挨拶は重要です。

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