市営住宅条例で入居者が暴力団員であることが判明した場合に明渡請求できる定めは憲法に違反しないとされた事例(最高判平27・3・27)
目次
市営住宅条例で暴力団員に退去請求をする事は合憲
この判例では、暴力団員が市に対し憲法14条1項、22条1項違反を主張していますが、最高裁はこれらの請求を棄却しました。
理由は、合理的な理由のない差別ではない、公共の福祉による必要かつ合理的なものとされています。
また、判例では、「暴力団員は自らの意思により暴力団を脱退し、そうすることで暴力団員でなくなることが可能で、市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず、
当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない」とありますが、市営住宅以外でも、暴力団員が住む事を歓迎する街なんて日本中どこにもないでしょう。暴力団員は暴力団を脱退する一択です。
事案の概要
被上告人某市(以下「某市」という。)は、平成17年8月、某市営住宅条例(以下「本件条例」という。)の規定に基づき、市営住宅のうち某市が所有する住宅(以下「本件住宅」という。)の上告人である入居者を(以下「入居者」という。)とする旨決定した。
本件条例46条1項柱書は「市長は、入居者が次の各号のいずれかに該当する場合において、当該入居者に対し、当該市営住宅の明渡しを請求することができる。」と規定しているところ、某市は、平成19年12月、本件条例を改正し、同項6号として「暴力団員であることが判明したとき(同居者が該当する場合を含む。)」との規定を設けた(以下「本件規定」という)。
某市は、平成22年8月、入居者に対し、その両親を本件住宅に同居させることを承認した。
その際、入居者及びその両親は「名義人又は同居者が暴力団員であることが判明したときは、ただちに住宅を明け渡します。」との記載のある誓約書を某市に提出した。
また、本件条例によれば、市営住宅の入居者又は同居者のみが当該市営住宅の駐車場を使用することができ、入居者又は同居者でなくなればこれを明け渡さなければならないところ、某市は、同年9月、上告人に対し、本件住宅の同居者であることを前提に、本件住宅の駐車場である土地(以下「本件駐車場」という。)の使用を許可した。
某市は、平成22年10月、警察からの連絡によって、入居者が暴力団員である事実を知った。
そこで、某市は、同月、入居者に対し、本件規定に基づいて同年11月30日までに本件住宅を明け渡すことを請求するとともに、入居者の両親に対しても、本件駐車場の明渡しを請求した。
一審は某市の主張を認め、二審も入居者及び両親らの控訴を棄却したため、入居者らが上告したもの。
判決と内容のあらまし
最高裁は、上告人入居者らの請求を棄却した。
1.入居者らは
①本件規定は合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから、憲法14条1項に違反する
②本件規定は必要な限度を超えて居住の自由を制限するものであるから、憲法22条1項に違反する
③入居者は近隣住民に危険を及ぼす人物ではないし、入居者の両親はそれぞれ身体に障害を有しているから、本件住宅及び本件駐車場の使用の終了に本件規定を適用することは憲法14条1項又は22条1項に違反すると主張する。
2.地方公共団体は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることに鑑み、低額所得者、被災者その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、住宅の供給その他の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を策定し、
実施するものであって(住生活基本法1条、6条、7条1項、14条)、地方公共団体が住宅を供給する場合において、当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては、その性質上、地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。
そして、暴力団員は、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ、このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には、当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはできない。
他方において、暴力団員は、自らの意思により暴力団を脱退し、そうすることで暴力団員でなくなることが可能であり、また、暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それは、当該市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず、当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。
以上の諸点を考慮すると、本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。
したがって、本件規定は、憲法14条1項に違反しない。
また、本件規定により制限される利益は、結局のところ、社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益にすぎず、上記の諸点に照らすと、本件規定による居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。
したがって、本件規定は、憲法22条1項に違反しない。
そして、入居者は他に住宅を賃借して居住しているというのであり、これに、上記記載の誓約書が提出されていることなども併せ考慮すると、その余の点について判断するまでもなく、本件において、本件住宅及び本件駐車場の使用の終了に本件規定を適用することが憲法14条1項又は22条1項に違反することになるものではない。
まとめ
2020年1月、六代目山口組と神戸山口組について特定抗争指定暴力団に指定され、事務所周辺は常に警察が監視しているところもあります。
2015年からの山口組分裂抗争による影響で、住宅街での発砲事件や抗争が多発しており、いつ一般市民が巻き込まれてもおかしくない状態です。
暴力団員が近くに住む事で、一般市民の平穏な生活が害される可能性があり、いつ抗争が起こるかもしれないという不安を抱えた生活を送らなければいけなくなります。
暴力団員は、暴力団を脱退できないのであれば、誰もいない無人島でバトルロワイヤルでも何でもやっていただきたい。
また、今回の判例で暴力団員が主張してい憲法は下記の内容です。
【憲法第14条1項】すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
【憲法第22条1項】何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
無法者の暴力団員も、憲法や法律には詳しいようです。
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