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騙されて購入した収益物件、契約の取消しが認められた事例

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騙されて購入した収益物件、契約の取消しが認められた事例

 消費者契約法4条による取消しが認められるとした事例(東京地裁平24年3月27日)

騙されて購入した収益物件、契約の取消しが認められた事例

 「絶対に儲かる」そんなうまい話しなんてありません。

 特に不動産投資をするのであれば、知識武装をしておかなければ悪質な不動産業者に騙されてしまいます。

 最低限の知識として購入予定の物件周辺の相場観くらいはつけておきましょう。

 「かぼしゃの馬車」の時もそうでしたが「利回り8%、30年保証」なんて事はありえません。

 うまい話には必ず裏があります。

 判決の結論としては、買主が購入した2つの収益物件の契約は取消しをする事ができています。

 投資は自己責任とはいえ、明らかに買主に不利益となる事実を故意に告げなかった場合には、消費者契約法4条2項が適用され、契約を取消しする事ができます。

 【消費者契約法第4条2項(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)】

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

事案の概要

 ⑴買主は、会社の同僚Aから、マンション投資の話を持ちかけられ、平成21年2月12日、不動産会社の担当者B及びCと会い、マンション投資の話を聞いた。

 BとCは、マンション投資は家賃収入があって、それを住宅ローンの返済に充てるので損をしないことを強調した。

  ⑵同月17日、買主は、C及びCの上司と会った。

 その席で、物件1は通常3130万円であるが、会社に無理言って2840万円で押さえていること、頭金、毎月のローンの金額、家賃収入などから月々7359円の保険と同様であり、仮に将来売却する場合、現在の物件価格から売却査定価格が10%低下したとしても、ローン残債を返して利益が出ることなどを説明され、急かされるままに仮契約を交わした。

 ⑶同月24日、Cの上司及びCと会い、Cの上司から、物件1は高台にあって、場所的には良いところであると言われ、買主は、小遣いで何とかできるものと誤信し、契約1を締結した。

 ⑷同年2月末頃、買主はCの上司らと会い、物件2を紹介された。

 その際、Cの上司は、物件2はNTTの関連会社の借上げ物件なので空室になる心配はなく、場所的にも良い物件であり、通常2300万円のところ、特別に2100万円で押さえていること、シミュレーションを見せ、頭金、住宅ローン、家賃収入などを比較して月々8757円の持ち出しであることなどを説明した後、直ぐに売れてしまうなどと購入を急かした。その後、同年3月10日、買主は契約2を締結した。

 ⑸同年3月下旬頃、買主が他業者で簡易査定をしたところ、

物件1が2000万円程度

物件2が1400万円程度とされ

 その後、不動産鑑定士にも

物件1が1860万円

物件2が1460万円と評価された。

 ⑹そこで買主はCに対し、売買契約を解除したい旨申し入れたが、Cはいま解約するともったいないなどと言って解約に応じなかった。

 買主は、消費者契約法4条1項、2項に基づき、契約1及び2の取り消しを求めて提訴した。

判決と内容のあらまし

裁判所は、以下のように述べ、原告の請求を容認した。

 ⑴不動産会社が提示した価格は、何ら根拠が示されていないことや簡易査定及び不動産鑑定書と比較して市場動静を加味したとしても、合理的な変動の範囲内にあるとは到底思われなことなどを考慮すると、適正な価格を反映したものとは言えない取引であったものと認める。

 市場適正価格は投資をする際の重要な事項と言わなければならない。

 その意味で、不動産会社は、契約を締結する際の重要な事項について事実と異なることを告げたものと認める。

 ⑵「将来売却プラン」を見せたため、買主は、不動産価格の下落が精々10%程度であると誤信させられ、予想できない急激な不動産価格の下落がない限りいつでも売却できるものと誤信したこと、購入後中古マンション扱いとなるため、売却価格は分譲価格の6ないし7割となるところ、そのような説明をされておらず、いつでもローンの残債が処理できる価格で売却できると誤信したものと認める。

 ⑶「将来売却プラン」は、価格の下落が10%程度が最大限であるかのように示され、20%以上の下落等については何ら記載されておらず、かつ、投資の危険性を説明した形跡は見当たらない。

 また、同時期に示された書面は30年以上も同じ家賃を前提とし(※の中で家賃の変動があることを示唆している)、買主が関心を示していた毎月の支払が小遣い程度で収まるとの点においても同書面は誤認させる要素を多分に含んでいるものと認められる。

 したがって、重要な事項について買主に不利益となる事実を故意に告げなかったものと認める。

 ⑷融資申込が拒否されないように登記費用などについて不動産会社が負担することを秘すように指示し、他方、将来的に家賃収入が減ったり、入居者が見つからなかった場合に買主の小遣いではローンの返済ができなくなることについて十分説明をしていなかったものと認める。

 ⑸不動産会社は、買主に対し、契約1及び2の締結の際、重要事項である物件の客観的な市場価格を提示していないこと、家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシミュレーションを提示し、買主に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他買主が不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかったなど消費者契約法にいう重要事項について買主に不利益となる事実を故意に告げなかったため、買主はそのような事実が存在しないと誤認し、それによって買主は契約1及び2を締結したものであるから、同法4条2項による取消しが認められる。

(なお、買主の損害として、支払総額5016万5900円から、受取家賃などの総額319万9180円の差額4696万6711円が認められた。)

まとめ

 物件1と物件2に関して、裁判所の「合理的な変動の範囲内にあるとは到底思われない」と判断される基準に関して検証してみます。

 ■物件1、不動産鑑定士の評価1860万円の物件を、上司に無理言って2840万円で購入

 2840-1860=980万円 

 980万円の乖離、鑑定士の価格の約1.5倍

 ■物件2、不動産鑑定士の評価1460万円の物件を、特別に2100万円で購入

 2100-1460=640万円 

 640万円の乖離、鑑定士の評価の約1.4倍

 不動産業者にも簡易査定は、当てにならいように思いますので、不動産鑑定士の評価を基準に計算しました。

 不動産取引価格が、鑑定士の評価の約1.4~1.5倍以上は、合理的な変動の範囲内にあるとは到底思われないと判断される可能性があるようです。

 上記の乖離幅と同じようなワンルームマンション等を、不動産業者に騙されて買ってしまったと、後悔している方は一度弁護士にしてみてもいいかもしれません。

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