不動産の持分2分の1に係る仲介手数料について、商法512条に基づく相当報酬の額として、当該不動産の残余の持分2分の1に係る仲介手数料と同額が算定された事例(東京高判平23・3・9)
33億円の仲介手数料をめぐる裁判。両手仲介は双方代理で違法!?
2020年1月14日、仲介手数料に関する裁判で東急リバブルが敗訴し、仲介手数料の事前説明と、承諾を得ることの重要性を改めて認識させられました。
この判決で東急リバブルは、賃貸契約の契約において、国が定める0・5カ月分を超える手数料を「承諾なく受け取ったのは違法」として返還を命じられています。
下記の判例に関しても、仲介手数料の支払いについて合意はなかったと買主に主張をされています。
後から言った言わないのトラブルにならないよう、申込時には媒介契約書等で報酬額の承諾を得ておく必要があります。
判例の中に出てくる「特定目的会社」とは、資産の流動化だけを目的として設立された会社のことです。
これと似た特別目的会社という用語もあります。
特別目的会社(SPC)を設立する目的には、資産の流動化・節税・M&Aなどいろいろなものがあります。
特定目的会社(TMK)は、その中の資産の流動化だけを目的として設立された特別目的会社(SPC)のことです。
特別目的会社の最大のメリットは、オフバランス化が可能になるという点です。
オフバランス化とは、貸借対照表から不動産などといった資産を切り離すことをいいます。
過去に粉飾決算の為利用されたケースもありますが、今では法改正によって悪用されるケースは減ってきているようです。
事案の概要
結論
■民法108条(双方代理)は認められず、買主は、不動産仲介業者に対し、報酬8億4000万円及び遅延損害金を支払う義務があるとされる
登場人物
■買主(原告、訴えを起こした側)
■不動産仲介業者(被告、訴えられた側)
■リーズ特定目的会社
■売主(農林漁業団体職員共済組合)
(1)買主及びリーズ特定目的会社は、売主との間で、買主及びリーズ特定目的会社がそれぞれ2分の1の持分を取得し、売買代金も2分の1ずつ負担するとの約定で、売主から土地建物(通称名「虎ノ門パストラル」)を代金2308億9721万0179円(税込み価格2309億0211万6688円)で買い受ける旨の売買契約を締結した。
(2)不動産仲介業者は、上記売買契約について、買主との間で、媒介契約を締結するとともに、不動産仲介業者と買主の間に仲介手数料の協議が整わない限り、国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」に定める手数料上限額を仲介手数料とする旨の報酬合意をし、不動産仲介業者の仲介行為の結果、上記売買契約が成立したとして、買主に対し、主位的に、上記媒介契約及び不動産仲介業者主張の上記報酬合意に基づき、
仲介手数料:36億3666万2560円
【国土交通省告示による手数料上限額:〔200万円×5.25%+200万円×4.2%+(2308億9721万0179円-400万円)×3.15%〕÷2】
及び遅延損害金の支払いを、予備的に、商法512条に基づく相当報酬として、36億3666万2560円及び遅延損害金の支払いをそれぞれ求めた。
これに対して、買主は、上記媒介契約や上記報酬合意の成立を否認するとともに、仮に上記媒介契約が成立したとしても、民法108条(双方代理)の趣旨に照らして無効である旨主張し、商法512条所定の相当報酬の額を争った。
(3)原審は、不動産仲介業者と買主との間で上記媒介契約が有効に成立し、不動産仲介業者の仲介行為の結果、上記売買契約が成立したが、不動産仲介業者主張の上記報酬合意の成立は認められないので、買主は商法512条に基づき相当報酬額33億円を支払うべきものと判断し、買主に対し、相当報酬額33億円と遅延損害金を不動産仲介業者に支払うよう命じたので、買主が控訴をした。
判決と内容のあらまし
裁判所は、次のように判示し、原判決を一部変更した。
(1)商法512条に基づく相当報酬の額、不動産仲介業者の仲介行為は、買主とリーズ特定目的会社に対し等しく行われ、特にどちらかに偏った仲介がされたものではないところ、リーズ特定目的会社は、既に不動産仲介業者との間で仲介手数料を8億円(税込みで8億4000万円)とする旨の媒介契約を締結し、不動産仲介業者に対しこれを支払っている。
また、仲介手数料の額については、開示された資料を見ても、統一した算定基準があるようにはうかがわれないが、高額物件については、売買代金額の1%以下のものも少なからず存する。
これに加え、不動産仲介業者が行った仲介行為の内容(期間、労力、難易度を含む。)、推認される売主と不動産仲介業者との間で約定された仲介手数料等を勘案すれば、買主が不動産仲介業者に対し支払う仲介手数料の額は、8億4000万円(税込み)とするのが相当である。
したがって、買主は、不動産仲介業者に対し、報酬8億4000万円及び遅延損害金を支払う義務がある。
(2)原審の説示を引用した部分①買主から受け取る手数料の協議等について記載した入札要項の交付は、不動産仲介業者の入札参加者に対する不動産売買の媒介契約の申込みであり、買主による入札書の提出はこれに対する承諾と解され、媒介契約が成立したことが認められる。
また、不動産仲介業者の行った行為は売主及び買主の双方代理に該当しないから、媒介契約に民法108条の適用はなく、同条の趣旨にも抵触するものでもない。
②不動産仲介業者が不動産売買の仲介に関して受けることができる報酬額は国土交通省告示による手数料を上限とするが、減額の協議を予定していることを規定したものと解され、減額協議が調わない場合に上限額を仲介手数料とする旨の報酬合意は成立しておらず、手数料最高額が授受される旨の慣行ないし慣習も認められない。
まとめ
事前に報酬額の承諾を得ておくことは重要です。
また、たまにアメリカの不動産と比較して
「売主と買主の双方の代理をするのは双方代理で違法だ!」
という人もいるようですが、この判例でも否定されたように、日本の媒介は民法108条の双方代理)ではありません。
日本の媒介契約は「準委任」に該当します。
理由は、売主さまに代わって「売る」という判断をしないですし、買主さまに代わって「買う」という判断もしないからです。
逆に言うとこの判断をする場合は代理となります。
また、商法512条に関しては、契約を締結していることが要件になってはいないため、金額の合意がなく契約が成立しているとは言えない場合でも、商人は相当な報酬を請求できることが特徴で、商人に救済する道を与えくれている法律です。
【改正後】
民法第108条 (自己契約及び双方代理等)
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
2.前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
※108条2項は、新たに、「自己契約」・「双方代理」以外の利益相反行為を規制の対象にしたものです。
【改正前】
民法第108条(自己契約及び双方代理)
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
商法第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
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