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ゴミ屋敷の住人に下された192万円の修繕義務

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ゴミ屋敷の住人に下された192万円の修繕義務

 火災等により貸室に損傷を与えた賃借人には、貸室を本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるとされた事例(東京地判平28・8・19)

ゴミ屋敷の住人に下された192万円の修繕義務

 判例では、賃借人が部屋をゴミ屋敷にして火災まで起こしてしまっています。

 賃借人が普通に部屋を使用していたのであれば、自然にできる汚れや損傷は入居者の責任ではありません。国交省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)に定められています。

 しかし、ゴミ屋敷に関しては、このガイドラインも規格外で、判例のように築46年経過した物件で、居住年数も19年以上経っていたとしても賃借人の修繕義務が発生する事があります。

事案の概要

 ⑴賃貸人の親が昭和44年から所有する本件マンションの本件貸室に平成7年11月1日から入居していた賃借人(被告)は、平成13年10月6日、賃貸人の親と下記条件にて賃貸借契約を締結した。

 ①賃料・共益費:月額70,000円

 ②敷金:68,000円

 ③期間:平成13年11月1日~同15年10月31日

 ④火災保険:賃借人は火災等保険に加入する。

 ⑤更新料:68,000円

 ⑵平成23年9月30日、

 賃貸人(原告)は、賃貸人の親より賃貸人の地位を相続した。

 本件賃貸借契約は平成25年10月31日に期間満了となったが、賃借人は更新契約を締結せず、かつ、火災保険にも加入しなかった。

 その後、本件賃貸借契約は法定更新された。

 ⑶平成27年2月4日、賃借人は本件貸室において、タバコの不始末による火災を発生させた。賃借人は、本件火災によって本件貸室を使用できなくなったため、同月28日に退去した。

 ⑷賃貸人は、賃借人及び連帯保証人に対し

 ①本件貸室の原状回復費用(各室のドア、壁紙・フローリング、給排水設備、電気設備及びガス設備の補修費用の補修費用等)143万円

 ②原状回復工事が完了するまでの間の本件貸室を賃貸できなかったことによる逸失利益49万円(月額7万円×7か月分)

 ③本件貸室の新たな入居者に対する本件火災事故の告知により賃料を減額せざるを得ないとした逸失利益33万6千円(月額7万円×20%×24か月分)の支払を求めて提訴した。

 一方賃借人は、「本件マンションは築造から46年を経過しており、また賃借人は本件貸室に19年以上居住していたことから、壁のクロス、フローリング、襖、流し台といった部分については、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」において想定されている経年変化の年数を既に経過しており、これらは賃貸人が負担すべきである。

 賃借人は業者に依頼して、本件貸室のオゾン燻蒸(ぐんじょう)による消臭作業壁紙剥がし床剥ぎ等の作業等を、合計112万円余をかけて工事を行っており、原状回復義務を一部履行している。

 などと主張してこれを争った。

判決と内容のあらまし

 裁判所は、次のとおり判示し、賃貸人の請求を一部認容した。

 ⑴証拠によれば、平成23年10月の時点で、本件貸室はいわゆるゴミ屋敷の状態であり、平成27年2月24日に残置物の撤去作業を行った時点においても、押入れ・床面・風呂場やキッチンに夥しい量のゴミが詰め込まれていた。

 また、賃借人の退去後の平成27年3月上旬時点において、キッチンは床面のフローリングが剥がされ,キッチンとリビングとの間を仕切る引き戸はガラスが破損していた。

 また、バルコニーとリビングを仕切る窓の上に開けられた通気口の網戸は破損し、リビングの壁には穴を補修した跡が複数ある。

 風呂場においては、風呂場とキッチンを仕切るドアのガラスが無くなっており、床面や壁面の表面が剥がれ、コンクリートには亀裂が入っている。

 浴槽の蛇口は錆び付いて使用できず、浴槽の汚れも著しい

 本件火災が発生したのは本件貸室のリビングであるから、以上の設備の破損は、本件火災とは関係なく、賃借人による不適切な手入れ又は用法違反が原因であると認められる。

 以上によれば、賃借人は、本件火災前の劣悪な使用方法及び本件火災により、通常使用により生じる程度を超えて本件貸室の設備を汚損又は破損したと認められる

 ⑵賃借人は、本件火災前の使用及び本件火災により汚損又は損壊した本件貸室の設備を原状回復する義務を負うが、ガイドラインの経年変化の考え方が本件にも適用されるべきであり、本件見積書記載の工事は本来賃貸人である賃貸人が負担すべきものも含まれていると主張する。

 しかしながら、ガイドラインの考え方が本件に及ぶか否かにかかわらず、賃借人は、通常使用していれば賃貸物件の設備等として価値があったものを汚損又は破損したのであるから、本件貸室の設備等が本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるというべきである。

 また、賃借人は原状回復工事を一部行ったと主張するが、これが認められるのは玄関ドアの補修工事に過ぎない。

 ⑶以上により、賃借人は賃貸人に対し、本件貸室の設備等を本来機能していた状態に戻すための補修工事費用143万円、原状回復工事が完了するまでの間、新たな入居者に本件貸室を賃貸することができなかったことによる逸失利益49万円の支払義務を負う。

 ⑷ところで賃貸人は、本件火災事故の告知により、本件貸室の新たな賃借人の賃料が減額するとも主張するが、本件火災の告知により、新たな賃料が従前より確実に減額されるとの根拠は薄弱であり、将来の賃料の減額分を逸失利益と認めることは相当ではない。

まとめ

 部屋をゴミ屋敷にしてしまう人は必ずいます。

 テレビに出てくるようなゴミ屋敷ほどではありませんが、不動産の仕事をしているとゴミ屋敷同然の物件を見る機会がよくあります。

 ゴミ屋敷が近くにあると、近隣の人は本当に迷惑です。

 判例では、実際に火災も起こしているので、生き死にに関わる問題になってきています。

 そんな人が住んでいる物件に一緒に住みたくないと考えるのは当然の事でしょう。

 今回の判決で、居住年数が19年以上経っていた場合でも「賃借人に本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるというべきである」と判決されたのは良かったです。

 ただ、部屋をゴミ屋敷にする人は共用部にもゴミを置いたり、外から見ても分かるようなくらい汚していたりもします。

 物件の案内時、こういった人が住んでいる気配はすぐに気付きます。

 こういったゴミ屋敷がなければ借りてくれてた人もいるかもしれません。

 判例の賃貸人には長年に渡る逸失利益があったようにも思います。

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