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婚活サイトの登録者を騙して、ワンルーム投資をさせた事例

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婚活サイトの登録者を騙して、ワンルーム投資をさせた事例

 悪質な勧誘行為により投資用マンションの契約を締結した買主が、融資を受けた金融機関に対し、金銭消費貸借契約に基づく返還債務の不存在確認を求めたが否認された事例(東京地判平26・10・30)

婚活サイトの登録者を騙して、ワンルーム投資をさせた事例

 「私を信用してください」と、言う人に限って信用できない人は多い。

 デート商法で、何千万もするワンルームマンションを買わされて、「いい勉強代だったね」では済まされません。

 デート商法は人の信頼を利用する卑劣な手口です。

 また、「自分もワンルームマンション投資をしてるから安心して」と言って勧誘する営業もいますが、書類を偽造して自分が所有しているかのように見せかけることも容易いことです。

 基本的にワンルームマンション投資は損をする可能性が高いので、しっかりと利回り、市場性を調査して決断をしましょう。

事案の概要

 買主(原告)は、平成24年10月、結婚紹介所のウェブサイトに登録した。

 同年11月上旬、会員登録していたB社の従業員(被告)からメールの連絡を受け、その後、食事等もするようになった。

 同年12月5日、食事をした際、B社の従業員から不動産投資していることを聞かされた。

 同月15日、B社の従業員から「自分がついているので信用してほしい」などといわれ、投資用マンションの購入をすすめられた。

 買主は、B社の従業員に好意を抱いており、「不安もあるけど、やってみようかな」などと答えた。

 同月24日、買主は、喫茶店でB社の従業員の立会いのもと、宅建業者A社の担当者から重要事項説明書、売買代金を2570万円、融資利用額を2310万とするワンルームマンションの売買契約書及びサブリース契約書の提示を受け、署名押印し、手付として10万円を支払った。

 その後、買主は、融資手続のために銀行(被告)に赴き、金銭消費貸借契約(本件消費貸借契約)を締結し、

 同時に、本件消費貸借契約と本件売買契約が「法的に別個・独立の契約である」ことについて「説明を受け、理解をしていること」を確認した旨が記載された確認書に署名し、実印を押印して銀行に交付した。

 その後、B社の従業員からの連絡が少なくなったことから、B社の従業員の指定したFAX番号をインターネットで調べたところ、同番号はB社のものと分かり、B社の従業員と「出会い系サイト」で知り合って投資用不動産をすすめられたと述べる者が複数いることを知った。

 買主は、弁護士と相談し、A社に対し、クーリングオフで本件売買契約を解除する旨を通知し、銀行に対し、消費者契約法に基づき、本件消費貸借契約を取り消す意思表示をした。

 A社とは、訴訟上の和解により、未払いの売買代金残債務250万円の支払を免れるとともに、和解金として220万円の支払を受けた。

 買主は、B社の従業員に対し、不法行為に基づき損害賠償を求め、銀行に対しては、本件消費貸借契約に基づく元金2310万円の債務不存在の確認を求めて提訴した。

判決と内容のあらまし

 裁判所は次のように判断して、B社の従業員に対する不法行為に基づく損害賠償請求の一部を認容したが、被告銀行に対する請求は棄却した。

 ⑴B社の従業員の不法行為について

 被告B社の従業員は、同被告に好意を抱いていた原告の交際に対する期待を利用し、原告に冷静な判断をさせる機会や情報を十分に与えないままに本件取引を行わせたというべきであって、財産的利益に関する十分な意思決定の機会を奪ったのみならず、原告の交際や結婚を願望する気持ちを殊更(ことさら)に利用し、かかる恋愛心理等を逆手にとって、上記勧誘が原告の人格的利益への侵害をも伴うものであることを十分認識しながら、投資適格が高いとはいえないマンションの購入を決意させたというべきであるから、被告B社の従業員の上記勧誘行為は、信義誠実の原則に著しく違反するものとして慰謝料請求権の発生を肯認(こうにん)し得る違法行為と評価することが相当である。

⑵金銭消費貸借契約の取消事由について

 被告銀行銀行は、A社ないし被告B社の従業員を通じて入手した原告に関する書類について、自ら与信審査等をした上で、契約締結時において、原告に対し、本件消費貸借契約の申込みの意思、内容等をも確認して契約締結手続を行っていることが認められるのであって、かかる事実関係に照らすと、原告の指摘を踏まえても、被告銀行と被告B社の従業員ないしA社との関係について、原告が主張するような密接な関係があったということは困難である。

⑶金銭消費貸借契約の無効事由について

 認定事実によれば、本件消費貸借契約と本件売買契約は、原告の指摘するとおり、経済的、実質的に密接な関係にあるということができるところ、本件売買契約が無効とされる場合には、売主と貸主(銀行)との関係、売主の本件消費貸借契約手続への関与の内容及び程度、売主の公序良俗に反する行為についての貸主(銀行)の認識の有無、程度等に照らし、売主による公序良俗違反の行為の結果を貸主(銀行)に帰せしめ、売買契約と一体的に金銭消費貸借契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情がある場合には、本件消費貸借契約も無効となると解するのが相当である。

 確かに、被告B社の従業員が恋愛心理等を逆手にとり、原告の交際に対する期待を利用して本件売買契約を勧誘したことについて不法行為が成立するものの、前記認定事実に照らすと、原告は、本件売買契約の内容を十分理解して契約を締結したというほかはなく、同契約自体が公序良俗に違反し直ちに無効になるということは困難である。

まとめ

 銀行に、悪質な勧誘をした業者との繋がりがなく、また、買主が詐欺行為で買わされていることも知らなければ、金銭消費貸借契約を無効にすることは難しいようです。

 悪質な手口で投資用マンションを買わせる業者が実在するのはたしかです。

 私のお客様の中には、ワンルームマンション投資で利益を出している方もいるので、完全に否定はしませんが、やはりワンルームマンション投資は損をする可能性が高いです。契約内容と、数年後のことを冷静に考えればすぐに分かると思います。

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