マンション販売業者は、ペットの飼育の可否につき、将来の可能性も含め購入希望者に正確な情報を提供するとともに、先行購入者に飼育禁止として販売したのち、後発購入者に対し飼育可能として販売する場合には、先行購入者の了解を求める信義則上の義務があるとされた事例(大分地判 平成17年5月30日)
ペット飼育の可否について、マンション販売業者の信義則上の義務違反
今、販売している新築分譲マンションではペット飼育可能のマンションほとんどです。
管理規約や使用細則にはペット飼育に関する制限が細かく記載されていますが、それを守らない方も中にはいます。
ルールを守らない方がいるマンションに関しては、後から管理規約が変更となりペット飼育不可になることもあります。
この判例では、先行購入者には「ペットの飼育は禁止されています。」と説明し、後発購入者には、「ペットの飼育は可能です。」と説明をしています。
マンション業者に信義則上の義務違反あるのはあきらかです。
事案の概要
先行購入者は、平成14年2月に、ペット類の飼育が禁止されるマンションであることを確認した上で、マンション販売業者から本件マンションを購入した。
しかし、先行購入者の購入・入居後に、マンション販売業者は先行購入者らの了解なしに、本件マンションをペット飼育可能なマンションとして販売し、ペット飼育者が入居するようになり、平成15年4月から先行入居者がマンション販売業者にクレームを述べていた。
他方、後発購入者はマンション販売業者に対し、犬を飼育していることを告げ、飼育が可能であるとの説明を聞いた上で、平成15年6月にマンション販売業者から本件マンションを購入した。
同年8月24日に開催された入居者説明会において、その時点で本件マンションで飼育されている動物については、一代限りで許可することが決議され、マンション販売業者はそれ以降、本件マンションをペット飼育禁止のマンションとして販売することを表明した。
同年9月に後発購入者が飼育していた犬が死亡し、2代目のペット飼育について総会での承認がえられず、後発購入者は2代目のペットを手放さざるを得なかった。
先行購入者は、ペット類飼育が禁止されるマンションとして説明を受け購入したにもかかわらず、マンション販売業者が先行購入者ら入居者の了解を取ることなく、後に飼育可能なマンションとして販売し、先行購入者の生活の平穏等が侵害されたとしてマンション販売業者に110万円の損害賠償を請求する訴えを提起した。
また、後発購入者は、マンション販売業者からペット類の飼育が可能であると説明を受けて本件マンションを購入したが、飼育できなくなる可能性についてマンション販売業者が説明を怠ったとして、マンション販売業者に135万円の損害賠償を請求する訴えを提起した。
判決と内容のあらまし
先行購入者及び後発購入者の請求をそれぞれ11万円、90万円の限度で認容した。
先行購入者に対する不法行為
マンション販売業者は、先行購入者に対し、単に飼育が禁止である旨説明しただけで、管理規約案に禁止条項がなく、後に管理組合で決められるため、飼育する入居者が出現する可能性があること、後にマンション販売業者自身が飼育可能マンションとして販売する可能性があることを説明せず、後にそのように販売した際にも先行購入者に対し説明をしていない。
よって、マンション販売業者には先行購入者に対する信義則上の義務違反があり、精神的損害を賠償する責めを負う。
後発購入者に対する不法行為
マンション販売業者は、後発購入者に対し、ペットの飼育が可能であることを述べるのみで、先行購入者との間でトラブルが生じる可能性があること、管理組合の議決により飼育できなくなる可能性があることを説明しなかった。
よって、マンション販売業者には後発購入者に対する信義則上の義務違反があり、精神的損害を賠償する責めを負う
まとめ
ペットを飼育している方は、ペットを家族の一員として考えています。
条件の良い物件が見つかったとしても、ペットと一緒に暮らせない物件であれば、引越しはしないと考える方も多いです。
ペット飼育ができるかどうかは、物件を購入するかどうかの大きな判断基準になります。
とはいえ、マンションは共同生活で、ルールを守らない人が増えると管理状況も悪くなり、悪い評判がネットに書き込まれ、資産価値が落ちてしまう事もあります。
ペット飼育可のマンションだからといってルールを軽視すると、後からペット飼育不可になってしまう事も本当にあることです。
ルールを守ってペットによるトラブルが起こらないよう、契約前に管理規約を読んでおく事も重要な事です。
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