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近隣土地所有者から通行禁止請求を受けた場合、通行はできなくなるのか?

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近隣土地所有者から通行禁止請求を受けた場合、通行はできなくなるのか?

 私道の所有者から近隣土地所有者に対する通行禁止請求等が棄却された事例(東京地判 平19.2.22)

近隣土地所有者から通行禁止請求を受けた場合、通行はできなくなるのか?

 「私道」だからといって必ずしも所有者の自由にできるとは限りません。

 公道に直接通じていない土地の所有者は、その土地を囲んでいる土地を通ることができます。要するに日常生活でその「私道」を通ることが必要な人は通行することができます。

 判例では、道路は本来公共の需要を満たすために存在するもので、他人の通行権を一般的に否定したり、通行禁止を求めることは、特段の事情のない限り、権利の濫用であって許されないとされています。

 判例のようなトラブルを回避するためにも、事前に私道所有者から、私道を無償通行させてもらう為の承諾書を取得しておいたほうがよいでしょう。

事案の概要

 先住者である近隣土地所有者ら(5名)は、居住する各住宅と外部を連絡する私道(以下「本件私道」という。)を所有していた。

 本件私道は建築基準法42条2項に規定するいわゆる「二項道路」に該当する。

 平成15年5月、宅建業者は本件私道に接する土地3筆を競売により取得し、共同住宅を2棟建築した。

 共同住宅のうち1棟は本件私道に接することにより接道条件を満たすものとして建築確認を取得した。

 もう1棟の共同住宅は西側の公道に接していることによる建築確認を得ている。

 その後宅建業者は共同住宅の土地建物を第三者に譲渡した。

 近隣土地所有者らは、

 ① 本件私道はもともと南側の公道に通じていたが、昭和27年にその接続は切断され、さらに宅建業者の前所有者は私道の一部を建物敷地として利用した。

 ② したがって前所有者は私道の共同利用関係から離脱しており、これを承継した宅建業者および第三者は本件私道の通行権を有していないと主張した。

 これに対し宅建業者は、

 ① 宅建業者および第三者の本件私道を通行することが近隣土地所有者らに対し何ら不利益をもたらすものではなく、近隣土地所有者らの主張は権利の濫用である。

 ② 第三者は共同住宅を現実に賃貸しており、また宅建業者は第三者から賃貸管理を受託しており、本件私道の通行を確保することについて必要不可欠の利益を有すると反論した。

判決と内容のあらまし

 裁判所は以下のように判示し、近隣土地所有者らの請求を棄却した。

 ① 敷地の宅建業者の前所有者が、本件私道に通じる別の私道の私道負担を負っていたことからすれば、前所有者が本件私道の通行権を放棄したというには無理があり、この点に関する近隣土地所有者らの主張は採用できない。

 ② 第三者が所有し宅建業者が管理する共同住宅は、本件私道に接することをもって建築基準法の接道義務を満たしていることは認めざるを得ない。

 そして共同住宅の住人が生活したり、宅建業者が管理業務を行う上では本件私道の通行が必要であり、通行できないというのは、居住者の日常生活上の基本的な利益を害されているというほかはない。

 ③ 自己の所有地がいわゆる二項道路として指定され、自己所有の建物がそれによって接道義務を満たしている場合には、その土地の所有者は、私法上、他人の通行権を一般的に否定したり、通行禁止を求めることは、特段の事情のない限り、権利の濫用であって許されないと言うべきである。

 道路は本来公共の需要を満たすために存在するものであり、自己が建築確認を受けることが出来たのも他人の通行を許容し、その結果都市の安全や快適さを確保することを社会一般に対して許容したからであり、自己所有の二項道路を他人が通行することも受忍すべきである。

 ④ 認定事実によっても、近隣土地所有者らの請求が権利の乱用でないといえるほどの特段の事情は認められず、近隣土地所有者らの請求は全部理由がなくこれを棄却することとする。

まとめ

 私道であっても、建築基準法上の「位置指定道路」や「2項道路」と呼ばれる道路(建築基準法42条1項5号、2項)では、「公益の保護」を目的として、所有者の権利が制限されたり、通行を妨げることができなかったりする場合があります。

 また、「私道」が、いわゆる袋小路になっていたり、コの字型になっていたりすると、そこに住む住民のみが使うことになりますので、原則として、公共の用とはなりません。

 ちなみに、袋小路やコの字型の私道の場合、道路交通法上の道路には該当しない為、道路交通法違反にはならず、警察が駐禁を取り締まることもできないようです。

 私道に面した不動産の購入する際は、無償通行の承諾書を取得した上で、近隣の私道所有者が駐車場をはみ出して車を駐めていないか、自転車を道路に駐めていないか等も含めて、周辺環境を慎重に調査する必要があります。

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