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ゴミ置き場が自宅の前にあることを知らずに購入【裁判例の解説】

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ゴミ置き場が自宅の前にあることを知らずに購入【裁判例の解説】

人間関係においては「近すぎず、遠すぎず」の距離間が大切です。

ゴミ置き場(ゴミステーション)に関しても同じです。

近すぎるとゴミ出しが楽な分臭いが気になり、遠すぎると臭いの心配はありませんがゴミ出しが大変です。

誰だってできれば自宅前をゴミ置き場にしてほしくはないはずです。

フェンスやストッカーなどで臭い対策をしてあるのであればまだ良いですが、都心の場合、そういった対策ができる場所は多くありません。

この裁判例では、買主の損害賠償請求は棄却されていますが、裁判所によって見解は異なります。

私はゴミ置き場に関しては、契約前に営業担当者がしっかりと調査をし、買主様に事前に説明をしておくことは当然であると考えています。

ゴミ置き場が自宅の前にあることを知らずに購入【裁判例の解説】

結論

買主の瑕疵担保責任等に基づく損害賠償請求、告知義務違反、不法行為責任に基づく損害賠償請求は棄却。

登場人物

■買主
■販売代理業者
■ 販売代理業者の担当者
■売主

※2020年4月以降、民法改正により「瑕疵担保責任」ということ言葉使われなくなり、「契約不適合責任」に変更されています。

事件の概要

(1)契約内容

平成10年7月、買主は、兵庫県宝塚市の土地を、販売代理業者を通じて売主より購入し、同時に本件土地上の建物の建築を売主に発注した。

同年9月、買主と売主は、この土地売買契約と建物請負契約とを、土地建物売買契約(売買代金4,295万円)に変更し、既払金220万円を売買代金債務に充当して、残代金を翌年1月10日までに支払うことを約した。

(2)ゴミ置き場の収集場所について

本件土地建物の前面道路の本件土地建物寄りの場所は、ゴミ収集車がゴミを収集に来るまでの間、地域住民が一時的にゴミを置く場所(ゴミ置き場)になっていたが、買主、売主及び販売代理業者は、本件売買契約当時、その事実を知らなかった。

(3)重要事項説明書には記載されていなかった

その後(残代金支払・引渡前)、ゴミ置き場の存在を知った買主は、販売代理業者に対し、本件売買契約に際して、売主らから前面道路がゴミ置き場になっている旨の説明はなく、重要事項説明書にもその記載はなかったとして苦情を述べた。

(4)販売代理業者の担当者の対応

買主の苦情を受けた販売代理業者の担当者が、地元自治会の班長を訪ねてゴミ置き場の移動を申し入れたところ、班長は、本件土地建物の東隣の販売代理業者の所有地の前に移動するのであれば構わないと答えた。

平成11年1月、販売代理業者の担当者は、ゴミ置き場問題が解決間近である旨買主に伝え、これを聞いた買主は、売買残代金4,075万円を支払って、本件建物に入居した。

(5)ゴミ置き場移設後、何者かに戻される?

担当者は、買主が入居した日に、ゴミ置き場を買主宅の隣家の前に移設したが、翌日には何者かにより買主宅前に戻されてしまった。

やむなく担当者は、近隣住民に会って説得したが、折り合いはつかなかった。

(6)市役所への相談

そこで担当者は、市当局とも相談した上で、同月24日、ゴミ置き場の移設について「買主宅とその両隣においては半年ごとに持ち回りでゴミを処理する。他の住民はこちらに置かないでほしい。」との趣旨を記載した「お知らせ」という書面を本件土地建物の前の道路に張り出した。

これに対して買主は、担当者の対応に感謝する旨の書面を担当者の宛に送付した。

(7)買主から瑕疵担保責任、告知義務違反を主張する訴え。

しかし、買主は、平成12年7月、ゴミ置き場が存在することは本件土地建物の隠れたる瑕疵に当たる等主張して、売主に対して、瑕疵担保責任等に基づく損害賠償を、また、販売代理業者に対して、宅地建物取引業法に基づく告知義務違反があった等主張して、不法行為責任に基づく損害賠償を求めて訴えを提起した。

判決と内容のあらまし

これに対して裁判所は、次のような判断を下した。

(1)裁判官の本件ゴミ置き場に関する考え方

ゴミ置き場事態は快適な市民生活を営むために必要なもので、誰かが住宅前にこれを置くことを覚悟しなければならず、また、本件ゴミ置き場は恒久的な施設ではなく、囲いや区画がされているものでもなく、永続的に本件土地建物の前の場所がゴミ置き場と決められているという性質のものではない。

(2)ゴミ置き場は瑕疵にあたるかどうか?

このような本件ゴミ置き場の性質及び内容、形状からすれば、本件土地建物が住宅として通常有すべき品質を欠き瑕疵があるというのは相当ではない。

(3)販売代理業者の担当者の責任について

販売代理業者の担当者の行為は、ゴミ置き場問題の解決に向けての尽力を約した性質のものと解すべきであり、尽力にもかかわらず功を奏さなかった結果責任を負担する趣旨のものとは解されない。

(4)販売代理業者に対する損害賠償請求について

販売代理業者は売買契約当時、本件土地建物の前がゴミ置き場になっていることを知らなかったのだから、販売代理業者の対応が買主らと近隣住民との不協和を生じさせたとの証拠もないから、販売代理業者に対する不法行為に基づく損害賠償の請求は理由がない。

(5)判決

買主の請求をいずれも棄却する。

判決に関する主観的なコメント

一戸建の売買の場合、ゴミ置き場が自宅前にあるから購入を見送るという人も多いです。

ゴミ置き場の場所は、買うか買わないかの判断に大きく影響する重要なことです。

また、ゴミ出しのルールに関しても各自治体・自治会・町内会などによって細かくルールが決められているところもあるので、慎重に調査をする必要があります。

中には、ゴミ置き場の掃除に関して、掃除当番制ではなく、「ゴミ置き場から一番近くの家に住む方がずっと掃除をしないといけない」というルールをつくっている自治体もあります。

ゴミ置き場に関しの調査ミスは、私の周りではベテランの営業マンほど多いミスです。

取引に慣れてくると、チェック項目を記載した資料等を使わずに調査を行ったりするためです。

この慣れが不動産取引において一番危ないことだど言えますので、面倒でも基本に忠実に行動することはトラブル回避に必要な考え方です。

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