無断のペット飼育による著しい損傷につき、経過年数を考慮したフローリングの貼替費用請求が認められた事例(東京地判平27・1・29)
ペットを無断で飼育した場合の原状回復費用
ペットを無断で飼育し、そのペットが室内を引っ掻き傷、糞尿等で汚してしまった場合、フローリングの張替え等、経過年数を考慮した原状回復費用が認められた事例です。
何らかの事情があり一時的にペットを飼うことになってしまった方もいますが、もともとペット飼育不可の部屋と知っておきながら、フローリングにマットを引く等の何の対策も取っていないのは無神経な人です。
事案の概要
平成25年7月、賃貸人(原告)は、賃借人賃借人(被告)と、本件貸室について賃貸借契約(本件契約)を締結し、引き渡した。
<本件契約の主な概要>
貸室:44.82㎡
賃料:128,000円/月
管理費: 10,000円/月
敷金:128,000円
違約金:138,000円(賃借人が本件契約を2年以内に解約する場合及び賃借人の違約により本件契約が解除される場合)
ペット:本貸室内での動物飼育は禁止。
<本件契約添付の原状回復修理基準>
・ハウスクリーニング特約:1,100円/㎡程度、最低金額25,000円
・クロス:1室(状況や資材により部分貼替可)6年で残存価値1円になる負担割合を算定。
・フローリング:原則は部分貼替又は補修(毀損等が複数個所の場合は1室単位)。
貼替えの場合は、当建物の耐用年数(50年)で残存価値1円となる負担割合を算定。
本件契約開始当初、居住者は賃借人のみで、ペット飼育の申し出はなかった。
しかしその後賃借人は、賃貸人に無断で賃借人の兄を同居させ、賃貸人に届けないまま、賃借人の兄が連れてきた中型犬(スタンダード・プードル)を本件貸室内で飼い始めた。
近隣居住者から、深夜に犬の鳴き声がうるさくて眠れない、本件貸室のベランダからの犬の糞尿の臭気がひどい、糞が共用部分に落ちているという再三のクレームが数カ月にわたって寄せられたことから、賃貸人は賃借人に対して、事前承認なくペットの飼育を行ってはならないことを指摘し、近隣苦情が重なっていることから改善してもらいたい旨を要望するとともに転居を勧めた。
賃借人は、平成26年4月、本件契約の解約を申し出、同年5月末、賃貸人の工事業者と原状回復の立会い確認を行い、本件貸室を退去した。
同年7月、賃貸人は賃借人に対し、原状回復費用等として計78万円余の退去精算書を賃借人に送付した。
しかし、賃貸人側が賃借人に再三架電するも、賃借人が応答することがなく、支払いもなかったため、計70万円余(フローリング及びクロスについて、当初の退去精算書では考慮していなかった経過年数を考慮して減額した額)の原状回復費用及びこれに対する遅延損害金を求め、本件訴訟を提起した。
<賃貸人の本件請求額>
ア未払賃料等に敷金を充当した残額5,548円
イ早期解約に伴う違約金138,000円
ウ原状回復費用:合計560,450円
①ルームクリーニング費用:25,000円
②洋室壁クロス貼替代:8,811円13.2㎡×@800円/㎡×83.44%(※1)
③LD壁クロス貼替代:18,824円28.2㎡×@800円/㎡×83.44%(※1)
④LDカウンター横壁下地調整代:3,000円
⑤フローリング貼替費用:399,900円見積額465,000円×86%(※2)
⑥巾木交換費用:8,400円
⑦残材運搬費:25,000円
⑧諸経費:30,000円
⑨消費税:41,515円
※1、83.44%=100%-(12ヶ月×1.38%)
・12ヶ月:入居期間
・1.38%=1÷72ヶ月(6年)
※2、86%=100%-(84ヶ月÷600ヶ月)
・84ヶ月:フローリング貼替えまでの経過期間
600ヶ月:50年(当建物の耐用年数)
これに対し賃借人は、上記請求のうち、「イの違約金については、賃貸人が請求することは不当である。ウ⑤のフローリング貼替費用については、全面貼替えの必要性に疑問があり、賃貸人の見積額は高過ぎる。」としてこれを争った。
判決と内容のあらまし
裁判所は次のとおり判示し、賃借人の主張を棄却し、賃貸人の請求を認容した。
⑴賃借人は、賃貸人の求めにより本件貸室から退去したのに、賃貸人が本件契約の解除に伴う違約金を請求するのは不当であると主張する。
しかし、本件契約において、他の者を同居させること及び動物の飼育は原則禁止されているところ、賃借人は賃借人の兄と同居し、また、犬を飼育するにあたり賃貸人の承諾は得ておらず、賃貸人が賃借人に退去を求めたのは賃借人の本件契約の違反行為によるものであるから、賃貸人が賃借人に退去を求めたことが賃借人において違約金の支払義務を免れる理由にはならないといえる。
⑵賃借人は、賃貸人のフローリング貼替費用の請求について、全面貼替えの必要性に疑問があり、46万5千円の見積額は高額過ぎると主張する。
しかし本件貸室には、フローリング全体にわたって、動物の爪等による引っ掻き傷、フローリング継ぎ目部分にも動物の糞尿等の染み込みと思われる黒ずみが多数見られ、また、室内は間仕切りがないタイプであり、新たに賃貸するためには、フローリングの部分貼替えではなく、全面貼替えが必要であることが認められる。
そして賃貸人の請求額には、本件契約の原状回復要項に従い経過年数が考慮されており、また、諸経費3万円についても、フローリングの全面貼替え等、原状回復工事として予定されている内容から考えても相当と認められる。
まとめ
ペット飼育不可の部屋にペットを黙って飼っている人はたくさんいます。
ペット飼育可の賃貸物件の数は少ない為、昔は大手不動産会社も「ペットじゃなくて”ぬいぐるみ”という事でしたらいいですよ」などと言って、ペットを飼っている事を知りながら貸す事がありました。
ペットは家族の一員でかわいいのは分かりますが。
ペットを飼育する余裕も無い人やルールを守れない人は、ペットを飼おうとするのはやめておきましょう。
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