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立退き交渉は、違法行為!?

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立退き交渉は、違法行為!?

「競売物件の占有者の退去等に関する請負契約が、 弁護士法に違反し民法第90条により無効とされた事例」東京高判 平成19年4月26日

立退き交渉は、違法行為!?

 不動産業者の「立退き交渉」は弁護士法72条違反になる可能性があります。

 また、このような行為を非弁行為と言います。

 非弁行為とは弁護士でない者が報酬を得る目的で、「法律事件」に関して「法律事務」を行なうこと、またはそのあっせん(仲介)をすることを業として行なうことを言います。

 2008年3月4日、大阪市の不動産会社社長らがスルガ社の依頼を受け、弁護士資格がないのに、ビル入居者に立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反(非弁行為)の疑いで逮捕された事件もありました。

事案の概要

 情報提供会社は、会員を募り競売物件の情報提供等を業とする会社であり、建設会社は、建設請負業等を営む会社である。

 競売の対象となった本件土地付建物は、建物は債務者が所有し、土地は債務者と第三者の共有となっていた。

 第三者の土地持分についての債務者の利用権原は不明であった。

 建物の占有者としては、競売による買受人に占有権原を対抗できる賃借人及び引渡命令の対象となる6名の者がいた。

 建設会社は情報提供会社の会員となって、本件土地付建物の競売についての情報提供を受け、平成13年2月に4億5000万円で裁判所の売却許可決定を受けた。

 同月、情報提供会社との間で、次の内容の「明渡し業務請負契約」を締結した。

①情報提供会社は、占有権原を建設会社に対抗できない6名の占有者と明渡し交渉を行い、本件建物から退去させる。

②建設会社が本件土地の共有物分割請求訴訟を裁判所に提起するにつき、その準備を行い、建設会社に訴訟代理人となる弁護士を紹介し、訴訟を円滑に遂行させる。

③建設会社は情報提供会社に対し報酬として2100万円(消費税込み)を支払う。

 6名は平成13年7月までに退去し、建設会社は同年1月及び6月に、情報提供会社に対し報酬として700万円ずつを支払った。

 また、建設会社は賃借人との間で「建物明渡に関する和解書」を同年10月に締結し、賃借人に460万円を支払った。

 他方、建設会社は情報提供会社から紹介を受けた弁護士を訴訟代理人として本件土地の共有物分割請求の訴え(訴訟1)を提起し、平成14年4月に本件土地の競売を命ずる判決が確定した。

 ところが、この判決に基づき建設会社が申立てた競売手続において、平成15年6月に本件土地の買受人があらわれ、同年11月、建設会社を相手取って建物収去・土地明渡を請求する訴え(訴訟2)を提起した。

 建設会社は弁護士に訴訟2の遂行を委任し、平成16年4月、建設会社が土地の買受人に5650万円を支払って土地を買い戻すことで解決した。

 同年12月、建設会社は情報提供会社に、報酬残額700万円から、競売申立費用の一部として69万円余、訴訟2に係る弁護士費用200万円及び本件土地の所有権移転登記申請費用60万円を控除した残額を支払った。

 情報提供会社は、建設会社に対し、報酬額の未払い分の支払を請求する訴えを提起した。

判決と内容のあらまし

 第一審は情報提供会社の請求を認容したが、控訴審は、次のように述べて原判決を取り消し、情報提供会社の請求を斥けた。

①「明渡し業務請負契約」に基づく情報提供会社の行為の弁護士法第72条本文該当性

 建設会社は、情報提供会社の代理人として、本件建物の明渡しに関する交渉を行い、明渡しを内容とする和解を成立させ、また、建設会社が本件土地(共有地)の分割請求訴訟を提起する準備を行い、弁護士を紹介して訴訟を円滑に進行させ、約定の報酬の相当部分の支払を受けたものであるから、情報提供会社の行為は弁護士法第72条本文にいう「報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件(中略)その他一般の法律事務に関して(中略)代理、(中略)和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらを周旋すること」に当たる。

②情報提供会社の行為の業務性

 情報提供会社の会員となり、情報提供会社から関東圏での競売物件の詳細記録の提供を受ける顧客は建設会社に限られるものではなく、複数の会員が存在する。

 また、情報提供会社が提供した競売対象物件に関する情報に関し、当該物件に興味を覚えた会員から情報提供会社に対し照会があった際に、情報提供会社が自己の実績を宣伝しつつ当該物件の占有者の排除を請け負うまでの行為の態様は、情報提供会社が行っている会員制の競売情報提供システムと密接な関係があり、また、情報提供会社が入手した競売対象物件に関する情報に基づき自ら買受人となって占有者の排除を行うという情報提供会社の業務とも密接な関連性、同質性がある。

 よって、情報提供会社は反復の意思をもって建設会社との「明渡し業務請負契約」に基づく法律事務の取扱い等をしたものであり、それゆえに業務性があるというべきである。

③弁護士法第72条に違反する契約の無効性

 建設会社が情報提供会社との間で「明渡し業務請負契約」を締結して前記の行為を行ったことは、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、弁護士法第72条本文所定の法律事務を取り扱い、その周旋を行ったことに当たり、同条本文に違反するといわざるを得ない。

 情報提供会社-建設会社間の本件契約は、同条違反の法律事務の取扱いの根拠となるものであり、本件契約を有効とすることは、同条本文に違反する行為が繰り返されることを是認することに他ならない。

 したがって、本件契約は、同条本文に違反する事項を目的とする契約として民法第90条により無効というべきである。

まとめ

 賃貸アパート等の立退き交渉は、不動産業者の業務の中に含まれている事があります。

 非弁行為になるかどうかは、報酬を受けるかどうかが重要なポイントになります。

 入居者の立退交渉は、明らかに弁護士法第72条の弁護士でない者が行ってはならない「法律事件」であるが、報酬を受け取っているかどう、今回のような反復継続しているようない場合であれば、民法第90条により無効となるこの可能性があります。

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