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位置指定道路の使用を拒否、建築確認は保護された利益ではないとされた事例

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位置指定道路の使用を拒否、建築確認は保護された利益ではないとされた事例

 位置指定道路に接する土地の買主が、設置されたフェンスにより、建築確認が取得できなかったとして求めた損害賠償請求が棄却された事例(東京地判平25・8・9)

位置指定道路の使用を拒否、建築確認は保護された利益ではないとされた事例

 この判例では、北側と南側の道路に面しているからと言って必ずしも両方利用できるとは限らないという事が分かります。

 北側の道路が位置指定道路になった経緯も関係がありますが、「位置指定道路により接道要件を満たすものとして建築確認を得ることが、当然に私法上保護された利益ということはできない。」と判決されています。

 契約前に近隣調査をよくしておく事で、こういったトラブルも回避出来たはずです。

事案の概要

 買主「(原告)(業者)」は、平成23年9月19日、売主他3名から、土地(以下「原告土地」という。)と建物を共に購入した。

なお、購入時、原告土地と北側に隣接する私道(以下「北側私道」という。)とは石塀によって画されており、原告土地から北側私道に出入りできず、公道への出入りは専ら南側私道を利用して行われていた。

 北側私道は昭和30年6月1日、北側私道所有者の祖父(以下「祖父」という。)が自己所有の敷地を分筆し、建築基準法42条1項5号の規定による道路位置指定を受けた位置指定道路であった。

 祖父は、道路位置指定の申請にあたり、原告土地、南側私道の当時の所有者にも土地の提供を求めたが、南側私道の所有者は、道路位置指定を受けることは承諾したが、土地提供を拒否したため、祖父は私道敷地を全て自己所有土地から提供した。

 なお、当時、北側私道と南側私道の土地の境界付近には、全面に石塀が設置されており、北側私道への出入りはできない状態であった。

 買主は、原告土地を4区画に分割して、北側の2区画は北側私道により接道要件を満たすことで建築確認を得ることとして、石塀のうち原告土地と北側私道の境界付近に設置されている部分を撤去したが、現実の出入りは、北側の2区画も南側に設けられる通路を利用する計画での分譲を予定していた。

 買主は、原告土地の引渡しを受ける前から、北側私道所有者に、北側私道によって原告土地の建築確認を得ることの協力を求めたが、北側私道所有者は、道路位置指定申請時の経緯もあり、買主の要請には応じられない旨回答した。

 北側私道所有者は、平成24年3月末頃、石塀があった部分に沿った境界付近に沿ってフェンスを設置し、これにより原告土地から北側私道へ出入りすることはできなくなった。

 買主は、同年5月30日頃、北側私道所有者に対し、フェンス等の撤去を求める書面を送付したが、撤去されなかったため、原告土地を北側1区画、南側2区画に分割し、北側1区画は、南側私道に至る通路により接道要件を満たすよう計画を変更、建築し、分譲し完売した。

 買主は、北側私道所有者はフェンスの設置により、建築基準法45条1項の趣旨にある、私道を法律的、物理的に消滅させられない利益を侵害し、北側私道所有者を含む北側私道の他の共有者は、何ら負担のないなかで建築確認の取得を妨害したとして、不法行為による2047万円余の損害賠償請求を求めた。

判決と内容のあらまし

 裁判所は、次のように判示して買主の請求を全て棄却した。

 外部との交通につき代替手段がないなどの理由により日常不可欠なものとなった位置指定道路の通行に関する利益は、私法上も保護に値するというべきであり、通行を妨害する敷地所有者に対して妨害行為の排除を求める権利(人格権的権利)を有するというべきであるが、位置指定道路を公衆が通行できるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害された者であっても、当然には道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有するわけではない。

 同様に、建築基準法45条で、私道の変更、廃止により、敷地が接道要件を満たさなくなった場合、特定行政庁がその私道の変更、廃止を禁止し、又は制限できる旨定めていることが、直ちに、当該私道に接する土地の権利者の通行する利益が、当然に私法上保護されると解することはできず、同様に、位置指定道路に接する土地の権利者が、位置指定道路により接道要件を満たすものとして建築確認を得ることが、当然に私法上保護された利益ということはできない。

 道路位置指定に係る申請は、専ら北側私道の北側及び西側の土地のために行われたものであり、50年以上の長期にわたり原告土地の通行には利用されたことがないのみならず、原告土地上の建物について北側私道により接道義務を満たすものとして建築確認が取得されたこともない。

 買主も、専ら南側私道が利用されている状況を認識した上で原告土地を一括購入したものであって、これらの事情からすると、原告土地について、北側私道を通行することや、北側私道により接道要件を満たすものとして建築確認を得ることが必要不可欠のものとは認められないのであるから、原告土地について北側私道により接道要件を満たすものとして建築確認を得ることが法律上保護された利益と認めることはできないというべきである。

 北側私道所有者がフェンス等を設置し、買主が原告土地について北側私道により接道要件を満たすものとして建築確認を得ることができなかったとしても、フェンス等を設置し、その撤去に応じなかった行為が、買主に対する関係で不法行為上違法な行為ということはできず、その余の点について判断するまでもなく、買主の請求はいずれも理由がない。

まとめ

 反射的利益とは、簡単に言うと「たまたまあった利益」という意味です。

 例えば、たまたま自分の家の前を、親切な隣の人が掃除をしてくれているというもので、掃除しなくなったからと言って、その人を責めることはできません。

 反射的利益は法律上保護された利益ではないという事です。

 ちなみに反射を反社と書くと大きく意味が異なります。注意しておきましょう。

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