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太陽光パネルの反射光が眩し過ぎると近隣住民から苦情

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太陽光パネルの反射光が眩し過ぎると近隣住民から苦情

 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、タマホームに対する損害賠償請求が棄却された事例(東京高判平25・3・13)

太陽光パネルの反射光が眩し過ぎると近隣住民から苦情

 太陽光パネルを、北向きに設置することは原則不可としているメーカーが多いです。

 また、禁止されていない場合でも推奨はされていません。

 設置後何かあった場合でも、メーカー保証の対象外となるケースがほとんどのようです。

 もし北向きの屋根であるのに強く設置を勧められることがあれば、その業者は信用できない業者ともいえます。

 例外として、真北から方向がそれている場合や、架台などで角度をつけれる場合などは設置可能ですが、北側は真南と比べると発電効率も悪く、北側隣地にバルコニーや窓にがあると反射光によるトラブルにも注意する必要があります。

事案の概要

結論

一審判決のうちタマホームの敗訴部分を取り消し、建設会社に対する隣地所有者者の損賠賠償請求を棄却

登場人物

買主(一審被告、本件建物所有者)

隣地所有者A(一審の原告、被控訴人、第一審の判決で被告に不服を持たれ、上級裁判所に再審理を要求したされた側)

隣地所有者B(一審の原告、被控訴人、第一審の判決で被告に不服を持たれ、上級裁判所に再審理を要求したされた側)

タマホーム(一審の被告、控訴人、第一審の判決に不服で、上級裁判所に再審理を要求した側)

買主(一審被告、本件建物所有者)は、平成20年4月14日、隣地所有者A及び隣地所有者B(被控訴人;以下「隣地所有者ら」という。)の建物の南側に、タマホーム(控訴人;タマホーム)によって、2階建ての本件建物を新築し、屋根上にソーラーパネルを南側に7枚、北側に12枚設置した(以下、北側に設置したソーラーパネルを「本件パネル」という)。

 本件建物は、その敷地が南側に傾斜して低くなっており、北側斜線の規制等のため、中央やや南側部分に最も高い部分があり、屋根の面積は、南側より北側が広く設計され、南側の屋根よりも北側の屋根により多くのソーラーパネルが設置された。

 また、本件パネルは、隣地所有者らの建物の南側の2階ベランダに出て立った際には目の前に見える位置関係になる。

 本件建物が完成する前の平成20年3月17日、隣地所有者らの建物に、本件パネルの反射光が差し込んできたため、隣地所有者Aは、直ちに買主に対処を求め、同月26日、タマホームの担当者らが、本件パネルの反射光が隣地所有者らの建物に差し込む状況を確認するなどしたが解決には至らなかった。

 隣地所有者らは、買主に対し、所有権に基づく妨害排除請求として本件パネルの撤去を求め、買主及びタマホームに対して不法行為に基づく損害賠償(隣地所有者らに各自110万円)を求めた。

 一審は、本件パネルの撤去請求及び損害賠償請求の一部(隣地所有者らに各自11万円)を認め、タマホームが控訴した。

 なお、買主は控訴をせず、本件パネルは、平成24年8月下旬に撤去された。

判決と内容のあらまし

 裁判所は、次のように判示し、一審判決のうちタマホームの敗訴部分を取り消し、タマホームに対する隣地所有者らの請求を棄却した。

⑴提出された資料の信憑性

 隣地所有者らは、本件パネルの反射時には通常の晴天時の4000倍以上のまぶしさとなると主張する。

 しかしながら、弁論の全趣旨によれば、本件パネルの反射光が通常の4000倍以上のまぶしさがあると認定することは困難である。

 なお、当審において隣地所有者らに対し、資料の追加を促しても、的確な証拠が提出されなかったことは、当裁判所に明らかな事実である。

⑵まぶしさの強度

 まぶしさの単位である輝度(きど)(単位名称:カンデラ[cd/㎡])を測定する輝度計を用いて、屋外の陽の当たる場所で本件パネルと陶器瓦、スレート瓦、その他の屋根材、サッシ類等を並べて、約2メートルの距離から輝度測定をしたところ、いずれの場合にも、本件パネルの方が輝度が低かったことが認められる。

 しかし、ソーラーパネルの正反射する場合の反射率は、一般に用いられている屋根材の中でも比較的まぶしいとされる白ガルバニウム鋼板と比べて若干高い程度であることが認められ、相当程度のまぶしさを感じるものではあることは否定できない。

 また、太陽光パネルメーカーの中には、そのホームページにおいて「北面への設置は、発電量が少ないこと及び近隣(北側)への反射光被害が懸念されるため、設置をおやめ下さい」と記載しているメーカーもあり、これは、太陽光パネルの反射光のまぶしさが屋根による反射光のまぶしさに比べてより被害が大きいことをうかがわせるものである。

 以上を総合すると、本件パネルによる反射光が、相当まぶしいものであることはうかがわれるものの、その強度を明らかにする証拠はないといわざるを得ない。

⑶反射光、照射時間

 本件パネルの反射光が隣地所有者らの建物に照射される時間は、

・春分の日において、2階部分にのみ午前9時頃から11時頃まで2時間程度

・秋分の日において、2階部分の一部にのみ午前9時頃から10時頃まで1時間程度

・冬至の日において、1階部分の一部にのみ午前10時15分頃から45分頃まで30分程度

・夏至の日においては0分

 であることが認められるのであり、窓の位置や反射光の差し込む角度等を考慮すると、実質的に隣地所有者らの建物に反射光が差し込んでいると評価できる時間はこれよりも更に相当短くなると考えられる。

 隣地所有者らは、カーテンをひいても本件パネルの反射光を避けることはできないと主張する

 しかしながら、レースのカーテンによっても相当程度透過を防げることができ、厚手のカーテンによればほぼ透過を妨げることができることが認められる。

 また、直進する光の性質上、反射光を直視しない限り、継続的に反射光の被害を受けることはなく、回避は容易であるということができる。

⑷タマホームへの賠償命令について

 本件パネルの設置に当たっては、北側の隣接家屋である隣地所有者らの建物とそこに居住する隣地所有者らへの配慮が求められるというべきではある。

 しかしながら、そのまぶしさの強度は、一般に用いられている屋根材と比べてどの程度強いかは明らかではなく、また、反射光が隣地所有者らの建物に差し込む時間は比較的短く、まぶしさを回避する措置を採ることが容易であるということができるのであるから、これらを総合すると、本件パネルの反射光による隣地所有者らの被害は、それが受忍限度を超えるものであると直ちに認めることはできない。

 そして、原判決後に本件パネルが撤去されていることも併せて考慮すると、タマホームによる賠償を命ずべき損害が隣地所有者らに生じたとまではいえないと解するのが相当である。

まとめ

 今、売電価格は年々安くなってきています。

 2012年度は40円/kWhでしたが、2020年度は12~13/kWhです。

 しかし、売電単価は下がっているのに比例して、商品の価格帯も下がってきているため、今は自分の家で消費する事を目的として設置する人が多くなっているようです。

 また、地方自治体によっては「蓄電池」を設置することによって受けられる補助金を受けられる事もあるようです。

 ソーラーパネルを設置することによって長い目でみれば得をする方も多いかと思いますが、コンディショーナーの交換費用や、屋根の強度、屋根塗替え時の費用面などのデメリットもいくつかあります。

 杜撰な工事をされ、雨漏りが発生する等の被害に合わないよう、コスト面で選ぶより信頼できる業者選びが一番重要です。

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