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原野商法で高齢者を騙し、無価値の土地を繰り返し売買させた事例

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原野商法で高齢者を騙し、無価値の土地を繰り返し売買させた事例

 土地売買を繰り返し行わせる原野商法被害において、不法行為による損害賠償、土地売買の詐欺取消を認めた事例(さいたま地裁川越支判平28・11・29)

原野商法で高齢者を騙し、無価値の土地を繰り返し売買させた事例

 ほぼ価値が無いと思っていた原野や山林の土地に、突然その土地を買取らせてほしいと言う者が現れれば誰でも嬉しくなります。しかし、上手い話には必ず裏があります。

 買取る者の目的は、買取金額を上回る土地を売りつける事が目的です。売りつける手口としては、「大学の建設予定があります。」とか「リニア新幹線の駅が近くにできます。」等色々とあります。

 この判例で、不動産業者の従業員は、被害者及びその妻のみが在宅している時のみ来訪し、「契約書を他の業者や家族に見せないように言っていた。」とあります。

 極めて悪質で卑劣なやり口です。

 ただ、不動産業者でなくとも土地の所有者情報を調べるのは簡単な事です。原野、山林を所有している方は、原野商法を行う不動産業者等に狙われていると思っておいた方が良いでしょう。

事案の概要

 被害者(原告・昭和12年生まれの個人)は本件土地1と、那須塩原市所在の土地を保有していた。

 平成26年5月頃、不動産業者(被告・不動産業者)の従業員が突然被害者を訪問し「被害者所有の本件土地1の売主は倒産した。

 本件土地1は水道も来ていないし、行き止まりだから売りにくい。

 不動産業者で買う。

 不動産業者紹介の不動産は、道路にも近いし店にも近いから、買ってもすぐに売却できる。」などと言って本件土地2の購入を勧誘した。

 被害者は、本件土地1を不動産業者に買ってもらうほかなく、本件土地2を購入して売却すれば元を取ることができると信じ、また、不動産業者従業員の「紹介した各土地は、高く売れるので買った方が良い」との勧誘に応じて、下記の一連の売買を不動産業者との間で行った。

 ■平成26年5月14日の売買契約

 本件土地2を代金390万円で不動産業者より購入、本件土地1を代金300万円で不動産業者に売却、代金差額90万円を不動産業者に支払う。

 ■平成26年6月11日の売買契約

 本件土地3を代金200万円で不動産業者より購入、代金200万円を不動産業者に支払う。

 ■平成26年8月11日の売買契約

 本件土地4を代金1500万円で不動産業者より購入、本件土地2及び土地3を代金1000万円で不動産業者に売却、代金差額500万円を不動産業者に支払う。

 ■平成26年9月11日の売買契約

 被害者所有の那須塩原市所在の土地を代金650万円で不動産業者に売却、本件土地5を代金1300万円で不動産業者より購入、代金差額650万円を不動産業者に支払う。

 ■平成26年10月14日の売買契約

 本件土地6を代金2500万円で不動産業者より購入、本件土地4を代金2200万円で、不動産業者に売却代金差額300万円を不動産業者に支払う。

 (各土地の固定資産税課税評価額:本件土地1:6874円、本件土地2:3336円、本件土地3:412円、本件土地4:396万7175円、本件土地5:71万0104円、本件土地6:9135円)なお、不動産業者従業員は、被害者及びその妻のみが在宅している時のみ来訪し、契約書を他の業者や家族に見せないように言っていた。

 被害者は、不動産業者とのこれら一連の売買契約につき、詐欺により取消した、暴利行為に当り無効、などとして、所有権移転登記の抹消登記を求めるとともに、不動産業者及び不動産業者の代表取締役に対して、被害者が不動産業者に支払った代金差額と弁護士費用計1914万円と遅延損害金の支払を求める本件訴訟を提起した。

判決と内容のあらまし

 裁判所は、次のように判示し、被害者の請求を全部認容した。

⑴詐欺行為について

 被害者は認知能力に当時既に衰えがあったものと推認されるが、本件各土地の売買契約はわずか5か月に4回に亘り、実質的には順次交換するような形で購入及び売却が繰り返されている。

 被害者にとって本件各土地を購入することに客観的な利点を見出すことはできず、不動産業者らも各売買契約を誘引して被害者がこれに応じた理由についてなんら主張しないことを考慮すれば、不動産業者の従業員らが被害者に対して転売が容易との虚偽の事実を述べて各売買契約を締結させたのは社会通念上許容される限度を超えて断定的に虚偽の事実を述べたものというべく欺罔行為を構成し、一連の行為が全体として詐欺に当たり、不法行為が成立するというべきである。

⑵不法行為について

 本件各土地の売買契約を締結した行為は、不動産業者が不動産業者の組織的な営業方針として行っていたものと容易に推認でき、不動産業者に不法行為が成立するというべきである。

 不動産業者の代表取締役は、平成26年当時、不動産業者の代表取締役であり、従業員らを指揮して上記組織的詐欺行為を行わせていたものと推認され、これを左右するに足りる事情は認められないから、不動産業者の代表取締役についても不法行為が成立し、共同不法行為となるというのが相当である。

⑶結論

 被害者は、不動産業者従業員らの欺罔行為がなければ、1740万円を交付することがなかったということができるから、不動産業者らの不法行為に基づき同額の損害を被ったということができる。

 また、本件訴訟提起に関する被害者の弁護士費用についても、不動産業者らの不法行為と相当因果関係のある損害と認める。

 本件土地4及び本件土地6には、被害者のために所有権移転登記がされているが、各売買契約は、被害者の取消しの意思表示により取り消されたから、被害者は、不動産業者に対し、物権変動的登記請求権の行使として、上記各所有権移転登記の抹消登記手続を求めることができる。

まとめ

 判決では、契約は取り消されていますが、こういった詐欺被害に合わない為にも身内に原野や山林を所有している方がいる場合は、あらかじめこういった原野商法という詐欺を行う業者がいる事を伝えておくと未然に防げるかもしれません。

 また来週は、6月21日は父の日です。両親と疎遠になっている方は、この機会に電話で話しを聞いてあげるだけでも喜んでくれるのではないでしょうか。

 家族とコミュニケーションを取る事で詐欺被害から大切な人を守る事ができるかもしれません。

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