オウム真理教に対する不動産贈与と脅迫(東京地裁 平成8年6月5日)
オウム真理教の強迫により不動産を贈与
「地下鉄サリン事件」から今年で25年。
もうこの事件を知らない、若い人も多くなってきているようです。
1995年(平成3年)3月20日に起きた地下鉄サリン事件を起こした首謀者は、オウム真理教の麻原彰晃。
オウム真理教はこの事件の前にも殺人事件など様々な事件に関わっていました。
その一つが、下記の判例です。
「不動産をお布施しなければ病気は治癒しない」
などといって、オウム真理教附属医院の医師らが、原告らに無理やりお布施と称して不動産を贈与させたもの。
結論としては、強迫によってされた意思表示であるため、この贈与は取り消しとされています。
事案の概要
結論
強迫によってされた意思表示であるため、贈与は取り消し。
原告は、昭和54年脳梗塞で倒れてリハビリ訓練をしていたところ、オウム真理教の勧誘を受けて、平成4年1月同オウム真理教附属医院に入院した。
オウム真理教附属医院の医師らは、原告らが脳梗塞の後遺症により、行動及び言葉が不自由で日常生活にも介助が必要な、精神的にも肉体的にも困憊(こんぱい)した状況にあったことを知りながら、長時間にわたって、家族との面会を厳しく制限し、かつ、孤立した環境に置いた。
さらに温熱療法(摂氏47度の湯に約5分から15分間全身首まで入浴させるもの)により不必要な苦痛を与え、時には失神状態に陥らせた上で、原告に対し、本件不動産をお布施しなければ病気は治癒しない等と執拗に寄付を迫った。
のみならず、家族の面会に監視をつけたり、会話を録音する等の異常行動をとり、家族らの退院申入れも拒絶した上、本件温熱療法を継続して、執拗に寄付を迫った。
このため、原告は、平成4年12月、本件不動産をオウムに対し贈与し、登記を移転した。
平成5年3月、原告の家族が原告を自宅に連れ戻し、その後、同贈与はAらの強迫によるものであるとして、オウム真理教破産管財人に対し、登記の抹消を求めた。
オウム真理教破産管財人は、本件贈与は原告の自らの意思に基づくものだと争った。
判決と内容のあらまし
これに対して、裁判所は
「オウム真理教附属医院の医師らは原告に対し継続的に繰り返し本件不動産の贈与を要求し、原告をして本件贈与をしなければならないという心理状況に追い込み、かつ、これに応じなければ今後も原告を孤立した状況に置き続けたうえ、身体に対し本件温熱療法等による苦痛を加え続ける旨を示してその反抗を抑圧し、よって本件贈与の意思表示をなさしめた」ものである。
本件贈与の意思表示はオウム真理教附属医院の医師らの強迫によってされた意思表示であるから、少なくとも取り消し得べき瑕疵ある意思表示に該当するとして、原告の請求を認容した。
まとめ
強迫による取り消しは当然の結果であると思います。
精神的にも肉体的にも、苦しみ疲れ果ててる状態の本人や家族に対し、追い打ちをかけるようなオウム真理教のやり方は、決して許せるものではありません。
信仰の自由は、憲法20条で保障されていますし、宗教に関しても否定するつもりはありませんが、殺人を正当化するオウム真理教のような宗教は、単なる犯罪者集団です。
民法第96条
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
- 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
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